2021/01/10 発表

第1章 大会運営についての規定

第1条 目的

本大会は、高等教育機関で日本語を学ぶ学生の日本語能力、論理的思考能力、批判的思考能力、傾聴能力、情報収集・分析・活用能力、及び口頭発表能力の向上をディベートを通して寄与すると共に、日本人学生との交流を通じて国際交流を深め、世界で日本語ディベートをする学習者のコミュニティを構築する事を目的にする。

第2条 論題

 本大会の論題は政策論題とする。

第3条 試合のフォーマット

本大会の試合は、下記に定めるフォーマットにしたがって行うものとする。

第4条  各ステージの役割 

  1. 立論では、各チームが、自分たちの立場を支持すべき理由を述べる。肯定側立論は、論題を実施するプランを提示し、そのプランからメリットが発生することを論証する。否定側立論は、現状維持の立場をとり、肯定側のプランからデメリットが発生することを論証する。
  2. 質疑では、相手チームの立論の内容について質問を行う。質疑での応答は、立論担当者が担当する。質疑での応答の内容は、立論の補足として扱われる。
  3. 反駁は、相手側の主張するメリット(あるいはデメリット)に対する反論、反論に対する再反論、争点のまとめ、議論の総括などを行う。

第5条  試合の進行 

  1. 試合は、司会者の指示によって進行する。試合に出場するディベーターおよび聴衆は、司会者の指示に従わなくてはならない。 
  2. 試合の各ステージは、各チームの担当ディベーターの持ち時間であり、その時間内での発言を保証される。持ち時間の途中でスピーチが終わった場合、ディベーターがスピーチを終了する旨を口頭で告げ、席に戻った場合に限り、司会は、次のステージに進めることができる。 
  3. 各ステージの担当者は、定められた時間内でスピーチをしなければならない。定められた時間を超えてスピーチがなされた場合、その内容は無効となる。ただし、文の途中を読んでいる最中に制限時間が来た場合は、その文の終わりまで読み切ることができる。

第6条 各ステージの担当

  1. 本大会は、原則として4名のディベーターが立論・質疑・第1反駁・第2反駁の各ステージをそれぞれ担当するものとする。  
  2. 出場選手の委細については、別に定める細則A「出場選手に関する細則」にしたがうものとする。

第7条 参加資格

本大会は、日本語でディベートを行う事ができるものを参加対象とする。

第8条 使用言語

本大会は日本語の使用を前提とする。原本の言語が日本語以外の資料を証拠資料として使用する際は、全文を日本語に訳すことを原則とする。細則B「証拠資料に関する細則」の(2)に定める提出する証拠資料には、原文と訳文を両方併記する。

第2章 ディベーターの責任

第9条 コミュニケーションの責任を果たすこと

各ディベーターは、発言内容を審判および相手チームに口頭で伝える責任を負う。そのために、各ディベーターは、正しく明瞭な発音、適切な速度、そして十分な声量で、聞き取りやすくスピーチを行うことを心がけなければならない。どんなに内容が優れていても、発音、速度、声量等のいずれかが適切でなく、審判が聞き取れず内容を理解できなかった場合には、判定に考慮されない。

第10条 マナーに留意すること

相互の尊重と信頼を損なうような表現や態度はあってはならない。必要以上に攻撃的な表現や相手を侮辱するような表現、審判および聴衆に不快感を与えるような表現、相手チームとのコミュニケーションを拒絶するような表現を使用してはならない。

第11条 立証責任を果たすこと

ディベーターは、個々の主張を根拠づけて立証する責任を負う。一般に、立証する方法には、二つの方法がある。すなわち、統計データや専門家の見解等を証拠資料として用い、論証する方法と、証拠資料は使用せず、理由を論理的に述べることで裏付ける方法の二つである。

第12条 証拠資料はその条件を満たすこと

前条に述べたように、立証するために証拠資料を用いることができる。ただし、その使用にあたっては、別に定める細則B「証拠資料に関する細則」にしたがわなくてはならない。

第13条 機器の使用と出場チーム外との連絡の禁止

  1. チームの出場者が、試合中に出場者以外の者と連絡をとったり、相談をしたりしてはならない。
  2. 試合を進行する上で主催者が必要と認めたものを除いて、ブラウザでの検索など、試合中の通信を行ってはならない。

第14条 反則行為と処分

  1. 反則行為があった場合、審判及び主催者は、協議の上、該当チームに対して、反則の程度に応じて、厳重注意・減点・敗戦・失格のいずれかの処分を行う。反則と認定する行為については、別に定める細則C「反則に関する細則」にしたがうものとする。
  2. 試合に参加したディベーターまたは登録したチームのメンバーは、試合中に相手チームに反則があったと判断した場合、試合終了直後に、司会者の許可を得た上で、審判に申し立てを行う事ができる。 

第3章 各ステージに関するルール

第15条 プラン 

  1. 本大会では、論題を実施するプランを提示する権利は、肯定側にのみ与えられる。否定側は、現状維持の立場をとるものとし、肯定側と異なる別のプラン(カウンタープラン)を出すことはできないものとする。仮に、否定側がカウンタープランを出した場合、そのプランは無効とみなされる。否定側がカウンタープランを出したことが確認された場合、審判は、その後の議論が無用に混乱することを避けるため、立論が終了した時点で試合を止め、そのプランがカウンタープランであり、無効であることを説明する。
  2. 肯定側は、立論で述べるプランを、立論で使用する証拠資料とともに、試合開始前に、審判と相手チームに提出しなければならない。(細則B「証拠資料に関する細則」の5を参照)

第16条 質疑

質疑は、質疑担当者が相手チームの立論担当者に対して、一問一答形式で行う。質疑において時間をコントロールする主導権は、質疑担当者の側に与えられる。相手側の立論担当者は、その指示に従いながら質問に答えなければならない。

第17条 新しい議論 

立論で言及していない主張や根拠を反駁のステージで新たに提出した場合、それらは「新しい議論」と呼ばれ、無効となり、判定の対象とならない。この措置は、すべての主張と根拠を立論において提示し、反駁の対象とし、かみ合った議論が十分に展開するようにし、公平な判定を可能にするためのものである。ただし、立論や反駁で出された相手の主張・根拠に対する反論・再反論については、この限りではない。

第18条 遅すぎる反論

相手チームの主張・根拠に対する反論は、相手チームに再反論の機会を十分に与えるため、可能な限り早いステージでなされなければならない。すなわち、肯定側立論に対する可能なすべての最初の反論は、否定側第2反駁ではなく、否定側第1反駁あるいは否定側立論においてなさなければならない。また、否定側立論及び否定側第1反駁に対する可能なすべての最初の反論は、肯定側第2反駁ではなく、肯定側第1反駁において行わなければならない。第1反駁において可能であったのに行わず、第2反駁になってからなされた反論は、「遅すぎる反論」と呼ばれ、無効となり、判定の対象とならない。これも、前条と同様、可能な反駁はできるだけ早く提示し、再反駁の機会を与え、かみ合った議論の十分な展開を可能にするための措置である。

第19条 不明瞭語彙の確認

相手チームが発話した重要語彙(または句、文節)が、発音不明瞭か、または議論の筋道から大きく離脱しているとの理由で理解できず、そのために後のステージに影響するかもしれないと判断した場合、ディベーターは準備時間中にその語彙の意味を審判に確認することができる。審判は試合の勝敗やポイントに影響しない程度に答えなければならない。

第4章 試合の判定

第20条 審判

試合の判定は審判が行う。 審判は判定において、次のことをする。

  • 1)勝敗の決定 
  • 2)コミュニケーション点の採点 
  • 3)試合の講評

判定は、別に定める細則D「判定に関する細則」にしたがって行うものとする。

なお、コミュニケーション点は、コミュニケーションの重要性を浸透させることをはじめ、最優秀ディベータ―の選出や、勝ち点が同点であった場合の決勝トーナメント進出の判定の基準として用いることを目的として採点するものであり、個々の試合の勝敗の決定に直接に用いるものではない。

大会フォーマット

① 肯定側立論:4分
(準備時間: 1分)

② 否定側質疑:2分
(準備時間: 1分)

③ 否定側立論:4分
(準備時間: 1分)

④ 肯定側質疑:2分
(準備時間: 1分)

⑤ 否定側第一反駁 :3分
(準備時間: 2分)

⑥ 肯定側第一反駁 :3分
(準備時間: 2分)

⑦ 否定側第二反駁 :3分
(準備時間: 2分)

⑧ 肯定側第二反駁 :3分

調査型ディベートルール細則

細則A 出場選手に関する細則

  1. 各試合の出場選手は、基本は4名を原則とする。
  2. ただし、チームの成員がやむを得ず4名に満たない場合には、主催者の了承を得た上で、2名あるいは3名での大会への参加を認める。2名での出場の場合は2名両名が、3名での出場の場合は内1名が、二つのステージを担当することを認める。その場合、そのディベーターが担当するステージは、連続しない二つのステージとする。
  3. 試合当日の試合開始5分前に、登録メンバーの中から選定した、各ステージの担当者を記した出場者名簿を司会に提出する。出場者と各ディベーターの担当ステージは、試合ごとに変更してよい。
  4. 出場者名簿提出後、試合開始直前や試合開始後に、出場者や担当ステージを変更することは、原則として認めない。ただし、突然の欠員など、やむを得ない事情により変更せざるを得なくなった場合は、主催者にその事情を説明し、主催者の了承が得られれば、変更を認められる。
  5. 同一のディベーターが二つのステージを担当することは、本細則第2項および第4項における例外的措置において必要となる場合以外には認めない。また、同一のディベーターが三つ以上のステージを担当することは、いかなる場合においても認めない。

細則B 証拠資料に関する細則

(1)証拠資料の使用にあたっての注意点

  1. 証拠資料として認められるものは、公刊された出版物、政府の公表した報告書、およびこれに準ずるもの(インターネット上に公開されている文書等も含む)で、一般に入手や閲覧が可能なものとする。
  2. 証拠資料を用いる際には、著者の肩書き・著者名・文献名・発行年を明示しなければならない。出典が不十分であったり不明確であったりした場合には、証拠資料の信憑性が低いものと判断され、効力を失う。なお、上記以外の出典情報(出版社、インターネットの資料の場合はURLアドレス等)はスピーチ時に読み上げる必要はないが、本細則(2)に定める、提出する証拠資料には、十分な情報を記さなければならない。
  3. 文献を引用して証拠資料として用いる際は、前項のとおり出典を示すとともに、引用の開始と終了を告げ、引用部分を明らかにする。
  4. 数値等をグラフ化または図表化し、ポスター等の形で審判及び相手チームに示しながら説明を行うことを認める。これらのグラフ化、図表化された資料も証拠資料の一つであり、著者の肩書き・著者名・文献名・発行年等の出典を明示する必要がある。なお、こうしたポスター等はあくまで口頭による説明の補助であり、口頭での説明は省略せず、十全に行わなければならない。また、こうしたグラフや図表資料の使用の有無や多寡によって審査が左右されることはない。

(2)証拠資料の提出について

  1. 各チームは立論パートのスピーチ終了後、立論で使用した原稿を相手チームに提出しなければならない。
  2. 各チームは反駁パートのスピーチ終了後、そのスピーチ内で使用した証拠資料を相手チームに提出しなければならない。

細則C 反則に関する細則

 以下の行為があった場合、反則とみなし、処分の対象とする。

  1. チームの出場者名簿を指定どおり提出しなかったとき。また、提出した名簿に記載されていない者が試合に出場したとき。
  2. 主催者の了承を経ずに、提出した出場者名簿の記載と異なるステージをディベーターが担当したとき。
  3. 主催者の事前の了承を経ずに、または必要な範囲を超えて、同一のディベーターが2つのステージを担当したとき。また、同一のディベーターが3つ以上のステージを担当したとき。
  4. スピーチ中の選手に対して、他の選手が口頭でアドバイスをしたとき。
  5. 私語等により、スピーチやスピーチの聞き取りを妨げたとき。
  6. チームの出場者が、試合中に出場者以外の者と相談をしたとき。また、使用が禁止されているものを使用したとき。
  7. 証拠資料をねつ造したり、改変したり、元の文章の文意を変えるような不適切な省略をしたりしたとき。
  8. 相手チームや審判から証拠資料の提示が求められた際、これに応じないとき。
  9. 出場者やチーム関係者が、試合中に司会者の指示に従わず、試合の進行を妨げたとき。
  10. 著しくマナーに反する行為があったとき。
  11. その他、ディベーター及びチームの関係者が大会運営に重大な支障を生じさせたとき。

細則D 判定に関する細則

1 勝敗の判定について

審判は、試合の中で繰り広げられた議論の内容を吟味し、メリットの全体とデメリットの全体を比較して、勝敗を判定する。メリットがデメリットより大きいと判断される場合、その政策は実行すべきだということになり、肯定側の勝利となる。そうでない場合(メリットとデメリットが同等の場合も含む)には、その政策は実行すべきでないということになり、否定側の勝利となる。引き分けはつけず、いずれかを勝ちとする。

メリットとデメリットの比較は、基本的に、次のように行う。

(1)個々の論点

 個々の論点については、次の基準で判断する。

  1. 一方のチームの根拠を伴った主張に対して、相手チームから反論があった場合には、審判は両者の根拠を比較して主張の採否を決定する。すなわち、主張の根拠が反論の根拠よりもすぐれている場合には主張を採用し、そうでない場合には主張を却下する。この際、一般には、次のような基準が考慮される。

a 根拠を伴うものは、根拠を伴わないものより有利になる。

b 論理的理由づけのうち、より緻密なものがそうでないものより有利になる。 

c 証拠資料のうち、事実報告においては具体性・媒体の性質など、統計資料においては調査時点・調査方法など、専門家の見解においては理由づけの良さ・専門性の高さなどの観点で優れているものが有利になる。 

  1. 一方のチームの根拠を伴った主張に対して、相手チームが受け入れた場合、あるいは反論を行わなかった場合、審判が根拠の信憑性とそれに基づく主張の説得力を吟味し、その主張の採否を判断する。

(2)個々のメリット(あるいはデメリット)の発生過程、および重要性/深刻性の確認

個々の論点についての判断に基づき、質と量と確率の観点から、個々のメリットあるいはデメリットの大きさを判断する。

  1. 発生過程について、メリットあるいはデメリットとして述べられたことが、プランを導入した場合にどれほどの確実さで発生すると言えるのかを確率(あるいは可能性)の観点から判断する。なお、ここで計上されるメリット・デメリットは、プランを導入した場合にのみ発生すると言えるものに限られる。現状のままでも発生すると言える部分は、メリットあるいはデメリットから除外する。
  2. 重要性/深刻性について、述べられたメリットあるいはデメリットが、質(あるいは価値)と量の観点から、どれだけ重要/深刻だと言えるかを判断する。  
  3. 以上の二つ、すなわち発生の確実さと重要さ/深刻さとを掛け合わせ、どの程度の確実さで、どの程度重要なメリット(あるいは深刻なデメリット)が発生すると言えるかを判断し、個々のメリット・デメリットの大きさ(議論としての強さ)を判定する。

(3) メリットの全体とデメリットの全体の比較

個々のメリットあるいはデメリットの大きさについての判断に基づき、メリットの全体とデメリットの全体のどちらが大きいかを比較し、判定する。互いに類似した複数のメリットあるいはデメリットがある場合には、重複を除外して全体の大きさを判断する。

なお、試合の議論の中で、比較の基準が提示されていれば、その立証の程度に応じて、判定に反映する。試合の中で示されなかった場合には、基準は、審判の判断に委ねられる。

2、コミュニケーション点の採点について

  1. コミュニケーション点は、第9条に記したコミュニケーションの責任をディベーターがどれだけ果たしていたかを基本とし、正しく明瞭な発音、適切な速度、十分な声量のほか、文法および語彙の選択の適切さ、議論の構成、表現力の豊かさ等を総合して、聞き取りやすさ、わかりやすさ、説得力といった観点から採点する。
  2. コミュニケーション点は、前項の観点から、立論・質問・応答・第一反駁・第二反駁のそれぞれについて、次の基準を参考に10段階で評価する。( )内は目安の一例である。
     「10点」非常に優れている。(間違いや違和感がほとんどなく、日本語として自然で、聞き取りにおいてストレスが全くない。)
     「 8点」優れている。(違和感が若干あるが、間違いが少なく、言っている内容はほぼ完全にわかる。)
     「 6点」普通。(多少の間違いと違和感があり、聞き取りに困難を覚えるところも部分的にあるが、全体を通して言いたいことは大筋わかる。)
     「 4点」改善の必要がややある。(間違いが多く、日本語として不自然で、言いたいことを理解できないところが少なからずある。)
     「 2点」改善の必要がかなりある。(コミュニケーションに支障を生じるほど間違いが多く、言いたいことがわからないところのほうが多い。)
  3. コミュニケーション点は、1名または2名以上からなる審判ないしコミュニケーション点専門審査員の得点を合計し、最も高得点であったディベーターを最優秀ディベーターとして表彰する。二試合以上に参加したディベーターについては平均点をとらず、高得点であった一試合の得点を対象とする。 
  4. コミュニケーション点の採点にあたっては、第10条に定めるマナー、および第14条と細則C「反則に関する細則」に定める反則の有無等についても、考慮する。